#3171

秋日和


文化


8ヶ月ほど前に大学の図書館の新書コーナーを眺めていたらふと目に止まり、
以来ちょこちょこと読んでいた
『Jポップとは何か -巨大化する音楽産業』(烏賀陽弘道著 / 岩波新書 / 2005年)
という本をちょうど今日、読み終わりました。
今年に入ってようやく本を読破するようになったという話は先日もしましたが、
図書館に入っている新書を最後まで読んだのは大学院時代ではこれが最初です。
先日も書いた通り、今の自分は難解な哲学書を除いても
15冊以上の読み途中の本があるのですが、
この本は音楽関係という事で、手に取った本の中でもとびきり読みやすい本でした。

1988年、あるラジオ局からJ-POPという名前を与えられて、
歌謡曲に海外文化を取り入れる形でガラパゴス的な発展を遂げた日本のポピュラー音楽。
その中には、日本文化が世界的になったんだという“ファンタジー”を背負い、
数々のマスメディアに支えられたJ-POPという特殊なジャンルがありました。
CMタイアップ曲として使う事を主眼に置き
“サビの15秒”さえきちんと作ればそれだけでミリオンが売れる時代、
電子楽器の発展によって安価に曲が作れる時代、
そんな1980~1990年代の激動の国内ポピュラー音楽について書かれている本です。
2012年現在、音楽を少しでも知る人ならよくご存じの通り
J-POPは今やそれほど売れなくなっていて、
その裏側にある“作られたブーム”“既得利権にかじりつく人々”
“海外では全く聴かれていない”といったJ-POPの闇の部分まで言及されています。
よく著作権法改正の時などでネット界隈で音楽業界が批判されているのを見ますが、
あれは正しい事だったんだなと、この本を読んでよく分かりますね。
裏金の話まで出てたのはちょっと深入りしすぎじゃないかと思いましたが、
それが事実なんだろうなぁと。

概ね、ただ何となくJ-POP大好き、なんとか48大好き、な人にはオススメできなくて、
むしろそういう作られたブームの存在に薄々気付いていて、
それについて深く知りたいという人にはオススメできる内容だと思います。
感心したのが、音楽を社会がどう見ているかという構図の説明の部分。
例えばアメリカなんかではFMラジオが凄く発展していて、
お金がなくてもラジオを回せばあらゆるジャンルの専門チャンネルがあるそうです。
今はlast.fmやyoutubeみたいな、
ストリーミング配信サービスがそれに代わられているという事も聞いたことがあり、
要するにあちらの人々は図書館にある本のように音楽も公共財のように見ていて
所得によってアクセスの多様性の差が生じない社会が出来上がっていると。
一方、日本はそういう文化の入口を大手レコード会社ががんじがらめに制限していて、
基本的には“音楽は買うもの”という社会通念が出来上がってしまっているわけです。
しかも、音楽アルバムは独禁法の対象外としてしまう法案が通ってしまったために
価格競争が起こらず、不況のせいでむしろ相対的に高価になり続けて
どんどん低所得者にとって手の出しづらい娯楽になってしまっているという現実。
今は、ネットサービスは常に世界主導でlast.fmなどは当然日本からも利用できるし、
Amazonに行けば安価な輸入盤を手に入れる事はできるものの、
それは洋楽の話であって、邦楽はまだがんじがらめという状況のようです。

自分もごく最近、洋楽の輸入盤を買うか、ボーナストラック付き日本盤を買うか、
大分悩んだあげく1,000円近く高い後者を買って、
ボーナストラックが物凄く難解で価格相応に思えなかったのを後悔したばかりですが、
その価格差の裏側にはこんな事情があったのかと思うと、
この著者がこの本を世に出してから7年も経った今、
結局まだ日本の音楽産業は変わっていないんだなぁと思わされます。

……なんだか、書籍紹介なのか感想なのかよく分からない文になってしまいましたが、
ともあれ新書の中ではとびきり読みやすくて楽しい一冊でした。
もともと自分も、Wikipediaなんかを見ていて表題のような疑問を感じていたので、
そういう自発的な疑問から入る事ができたというのも
すんなり読み進められた一因なんじゃないかと思っています。
新書を読む前に、分野問わずそのテーマについてのWikipediaの項目を読んでおくと
本に入りやすいかもしれませんね。

J-POPというと脊髄反射的に音楽的内容を批判したくなってしまう自分ですが、
今後はそういう局面に出会った時、この本の中身を思い出して
ある程度理性的に説明できるようになれたらなと思います。
……結局批判する方向に向かってしまいそうな気はしますが。
そんなわけで、ここ数日の読書プチブームが実を結んだ一日でした。
読書中はもちろんアンビエント音楽なども聞きながら、
大学の帰りはその気温差に身震いするなど、ある意味秋を満喫した一日だったかも。

今日は22時就寝05時起床。
中間発表が終わったという事を考えれば当たり前なのかもしれませんが、
最近ようやくブログ投稿も安定して話題のストックも順調に増えてきていて、
とりあえず転ばずにやっていけているな、という実感があります。
毎日が楽しい、と思うようになるにはまだ高いハードルがありますが、
今の自分にとってはこれで十分満足かなと。
まぁ、昨日発覚した金銭問題然り、来週末頃からはまた修論と格闘する日々が始まるため
こういう安定的な時間も長くは続かなそうなんですが……。

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