―目の前のゴールを目指さずに、今を精一杯努力せよ”―
そういう目標を立てて、今度こそと挑戦した、直感ヒトフデ。
今まで積み重ねてきた経験を糧に、挑んだ。
―エリア1。
前半はオールクリアをひとつはずすという些細なミスを犯す以外完璧。
そして後半は、多少思い通りにいかなかったものの、心のバランスを崩さずに通過。
その些細なミスがいつも、失敗に繋がる。
失敗の蓄積は、集中の場において成功の蓄積より強い。
だがこの程度なら失敗に繋がることはなかった。
―エリア2。
前半を、“ピース強制落下”で急いで通過。
慎重に行くと、寧ろ失敗してしまう。過去にそういう経験があった。
後半は多少の運が悪く、ここまでで520000点を得た。
―エリア3。
初心者でも侮れない最初の壁。
これでもかというほど練習したエリア10に酷似しているため、
比較的楽に通過した。が、ここからオールクリアがほぼ得られないのはいつも通りだった。
―エリア4。
後半はこれも嫌と言うほど練習したエリア9に酷似しているため、
非常に楽に通過した。前半は“直感”の見せ所だが、
苦手だったのでオールクリアは得られず、さっさとクリア。
―エリア5。
前半はエリア1の前半とほぼ同じなため、楽勝。
だがだんだんと緊張の汗が出始める。ここまで鎖は切れていない。
後半は多少焦ったものの、得点狙いに手を動かすことができた。
―エリア6。
このエリアは去年の大晦日前まではこの前半ができずに半ば諦めていた。
だがタイムスタンプのプレッシャーに押され、クリアできるようになった。
今となっては所詮得点のためのエリアに過ぎない。
―エリア7。
ここまでが前哨戦となる。
前後半とも油断はできないが、いままで2回しかここでゲームオーバーになった覚えはない。
そしてエリア8に着いた。
―エリア8。
ここからが本戦となる。
4ラインのカタマリを間髪入れずに消していく。
やっかいな、3手で消す4ラインの“あれ”は、もう慣れた。
―エリア9。
始めて1手で「9」を消した。「D」を消した。
落ちてくるものを次々と、今まではできなかった。
今回は、震えていたもののオールクリアを得る程まで軽快に消せた。
―エリア10。
今まで何度と無くこの場所までたどり着いて、そして蹴落とされた。
俊足の如く落ちてくる8ラインの「S」は、到底無理だと考えていた。
全ての組み合わせについて2~3手で消せる方法を編み出し、
そして994ラインを記録した時の練習のときを思い出した。
数値は目標の9割3分3厘をさした。一旦休憩する。
そして10分後、心を落ち着かせて再開した。これ以上になく、効率よくきえてゆく。
休憩で落ち着かせた心も、すぐに騒ぎ出す。押さえられない。
手ががくがくする。だがタッチペンを操るという点では衰えていない。
この感覚は、あの3年前の思い出と同じだった。
もう一度このチャンスを与えてくれた。緊張に打ち勝つ機会を与えてくれた。
もう失敗はしない、絶対に失敗できない。
そう心の中で何度も叫びながら、「S」を消した。
後半に差し掛かる。
何も慌てることはない、あと一歩・・。
―後半は一瞬で終わった。
ラインはぴったり“1000”を指していた。
スコアは3816365点。ランクは最高ではないが、僕にとっては最高だ。
その喜びは、この何年間、いや、始めて味わった感覚かもしれない。
自分の限界に何度でも立ち向かい、それを乗り越えて・・そしてついに、ゴールへ着いた。
難しかった。
いままで買った22本の、どれよりも。だから楽しかった。
乗り越えていく喜びを噛み締めること。
これができるから、まだゲームを止めるわけにはいかない。