#157

雪と涙の思い出 -中編-


今日の出来事


3回目の講習。
リフトに乗って、ふもとから1100m離れた地点へ。
そして急斜面へ滑る。
ところが、コントロールが利かず、転倒。
その先も何度も転んで、やっと追いついたと思ったら追いつかず、
果てにはスキーが外れるほどの大転倒をやらかし、
既に意気消沈状態。
転ぶたびに優しく教えてくれるT先生。
そして立ち上がり、また転び、立ち上がってはまた転び・・。
午前の講習の自分がウソみたいに調子が悪い。

ダメだ。無理だ。もう止めようか。
そんな気持ちが奥からこみ上げてくる。
これを表に出したら、中学の頃と何も変わりがない。
無理なことにぶつかっていくたびに逃げ出していた自分。
そんな過去を背負っている分、心の中の戦いは荒れてくる。
転んだら同じ班のみんなに迷惑をかける。そんなのはいやだ。
だけど転ぶ以外に待ち受ける方法を知らない。
運動能力が全くない自分を、いつも倍は恨めしくなった。
自分を消したいと思った。でもできない。
戸惑いが大きくなる。どっちへ進めばいい?
いつかそんな疑問符もかき消された。
何故か瞳から涙が出てきた。
悔しい。みんなについて行けない自分が。
それでも何とかみんなの方向にスキーを向けた時だった。
同じ班のK君が近寄って、基礎的なことを教えてくれる。
「大丈夫?教えてあげようか」
そんな何気ない言葉に、もう立つのも辛くなった。
涙があふれた。
支えられている自分の情けなさ。
支えてくれる周りの優しさ。
それらがぶつかり合って涙となる。
それでも支えられているんだ。滑らないと。
でも、転んでしまう。立ち上がる。
向こうからC君が歩いてくる、様な気がする。
だめだ。目がかすむ。立っているのが嫌だ。
無抵抗に、山側に倒れる。顔が雪に覆われる。
雪が柔らかい。とても気持ちがいい。
昨日寝たベッドよりも。
しばらく動かなかった。
ようやく来たC君が声をかけてくる。大丈夫?と。
心配してくれる分涙となって表される。
もうほっといてくれ。そんな気持ちも浮かんだ頃、
近くの別の班のインストラクターが話しかける。
別に身体に異常はないので、立ち上がらざるを得ない。
フラフラと体を起こす。
僕の班のインストラクターが来た。
簡単な質疑応答の後、僕はいつのまにか休憩室にいた。
顔を伏せて何も考えずに1時間過ごした。
部屋に戻った。

僕が涙を流した理由。それは自分でもはっきりと分からない。
けれど、きっと支えてくれる存在に感動したのだと思う。
無力な自分を支えてくれる人達。
そんな存在は、この高校に来るまでは微塵もなかった。
中学校の頃は、失敗はあざけり笑って終わりだった。
こんな僕を支えてくれた、インストラクターのT先生始め、
多くの人達がいたからこそ、結局は何とか滑れるようになった。

ありがとう。

いい思い出になった。

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雪と涙の思い出 -中編-” へのコメントが 2 点あります

  1. 感動的でした;;

    ”きっと支えてくれる存在に感動したのだと思う。”

    その感動わかります。つらいときや、苦しいときほど人の真心を感じるものですよね。

    人という字は、ささえあっていますものね^^

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