#456

初恋の思い出


独り言 自分


結局は、片想いというのは虚しいものだ。
叶わないと知っておきながら思いを馳せて、決して届かない夢をいつも膨らましている。
知ったこっちゃない相手の為に自分にしか反映しない程度の“色々なこと”をする。
僕は勇気もない、いいところもない、ひたむきに自分と向き合えない、
そして夢もうつろないいとこ無しの人間だと自覚している。
片想いというのは、恋した対象は結局自分に跳ね返ってくる。
自分がダメなら、結局ダメなのだ。叶いっこない。
まして、会う機会ですら自ら作らなければいけないような事態になってしまっている。
これはもう、手遅れとしか言いようがない。

最初彼女と会った時は、別になんとも思わなかった。
クラスメイトにそんな人がいて、結構名前がかわいい感じの子だったとしか意識していなかった。
その頃には僕はもう「豚」以下2人と同行の仲で、周りからの視線は冷たいものだった。
そのうちに密かにその子を気になり出しはじめたのは、はっきりと覚えていない。
きっと自然のうちに惹かれていったのだろうと思う。

ひとつのものやヒトに対して、何か良いことを見つけると他の事も正当化し、
良いことと見てしまうことがある。「良いこと」は好くとかそういう意味もあり、
その逆ももちろん存在する。関係というのはそうやって膨らんでいく。
僕は知らぬうちにその子の賢くて、かわいくて、おとなしくて、
そのどれもに惹かれていったのだろう、と思う。今でははっきりとしていないが。
そこで前にも話したが、決定的となったのが修学旅行だった。
別に本人と同行したわけではないが、
「あの子かわいいよね~」とその子を好きらしいS君が僕に彼女の話をした。
聞けば写真とかもとったらしい。数枚ほど。これは後日に見せて貰った。
僕はS君にかわいくない?と聞かれて頷いていた。その時に、火が改めてともったのだと思う。
しかし遠ざかっているのは事実で、
僕が思いっきり髪を(キモチワルイほど、何故か)伸ばしていたのが馴染んでも、
面と向かって「話し合った」のは無かった。
卒業寸前に彼女がとある男子を好きらしい、という話も聞き、
崩壊――そのままの意味でそれは一気に脳内で起きて、さらに卒業式を迎えた。


去年の6月12日、夢を見た。
彼女と並んでくっついて「話し合っている」夢を見た。
これは衝撃的だった。思えばあれはまだ高校生活に不慣れな部分もある頃、
そして忘れられまいと前々日創立記念日に卒業アルバムその他を眺めていたのが影響したのだろう。
この夢で彼女に対する想いは過去最高となった。
崩壊したのを忘れ、ただ幻想の世界に誘い込んでは同じ夢を見るという、
とんでもない愚かな行動を繰り返していた。
その後、今日に至るまで11回夢を見ることになる。
その中の3回目が1回目をある意味では越える夢だった。
それが、ちょうど1年前の今日。僕が今日まで掲げてきたこの日記の長編テーマである、
「枯れた思い出」の礎となる夢を見た。
内容は、1年前の日記にも書いたが、こういうものだった。

――廊下側3番目の席で自分が座っていた。
彼女はそのすぐ後ろの席で、僕と彼女は確かあの時は雑談をしていたのだと思う。
そして何故か僕は当時はまだ発売日すら決まっていないニンテンドーDSを片手に持っていた。
これはゲームにあまりにもはまってしまったゲーマーの悲しい習性だろう。
この時以外でも、結構夢の中でゲームが登場することは多々ある。
「ちょっと、廊下の様子見てくるから――」
と、廊下の異変に気付いた僕がその方へ向かい顔を出してみると、
およそ中1の頃から出会い続けてきた“馬鹿な輩”がやんややんやと踊り、笑っていた。
廊下は夢に出てくる中ではこれ以上にない、というほど汚れきっていた。
僕はなんの躊躇いもなく、教室へ戻ろうとする。
教室の中は清楚で静かな空間が漂っていた。ドアに手をかけ教室に踏み入れようとすると、
ひとりの活発な女子に行く手を阻まれて、
「ねぇ、あんたあの子の事好きなんでしょー!」
とかなんとか、いきなり言われた。確かあの時は僕は「えっ、ま、まぁ・・」と、
とりあえず肯定していたような気がする。
このあと席に戻ったが意識がぼやけ、気付いたらベッドの上だった。

馬鹿馬鹿しいと思ったことだろう。
それに、1年前の日記と似すぎている、とも。
しかし僕はこの回想を消さずに描き終えたいと思う。
何故なら、僕にはもう時間が経ちすぎた。
忘れるべき夢を、君を、もうすぐで忘れるだろう。
この日記は最後の灯火のようなものだ。
今彼女を思い浮かべても、実はとっくに顔がぼやけている。
容姿を忘れてまでもギリギリこうして覚えているのは、
きっと心の底ではあの日、焼き付けた記憶がまだ残っているからだと思う。
それにその延長線として「自分が作った物」が捨てに捨てられず、
架空上の彼女の方が、と思ったことすらある。
無理もない。現実の方で会ったのは一昨年の卒業式だ、と妥協したりもする。

片想いというのは諦めない限りとりとめのないもので、
時には浅はかな妄想だけで喜ばしいこともあり、
そして今のようにやりきれない虚しさを感じることもあった。
僕には恋なんてまだまだだと自覚している。
そんなヤツだからこその初恋の思い出は、悔しいながらも遙かな未来まで忘れることはないだろう。

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