#751

橙色の思い出


今日の出来事 独り言 自分


平成18年度体育大会。高校生活最後の体育祭が今日あった。

昨日自転車が壊れ、今日明日と親が大丈夫な限り車、
駄目なら1時間早く出て徒歩登校となっている僕に身にとっては体育祭よりも
登下校の方が疲れるのではないかと心配していたが、なんとか親が車を出してくれた。
ただし、親の勤務時間の関係で学校に着いたのは7時55分だった。
体育祭準備の係に当たる人達はもっと早くから着いて準備に取りかかっていた。
手伝おうかと考えたが、眠たかったのでベランダでそれを眺めること約30分。
いつの間にか教室内は人が沢山おり、体育祭らしい雰囲気になっていた。
簡単な連絡事項を聞いた後、椅子を持って移動。

今年、僕が所属する連合は「オレンジ」になった。
生徒数の多さからか、合計10連合が競い合う事になっているのでひとつひとつの存在感は薄い。
しかし自分が所属している連合というだけで、オレンジが特別な何かに見えた気がした。
先日配られたオレンジ色のTシャツを全員が着る。
表面の左胸部分と裏面にはT君が休日1日中掛けて作ったというデザインがプリントされている。
パックマンがメガホンと旗を持つ画の上下部分には毛筆で力強い言葉が書かれていた。

『一致団結 絶対優勝』――


開会式。
校長と生徒会会長の要らない話、昨年優勝連合からの優勝旗返還、準備体操。
そして選手宣誓が終わり、それぞれの応援席へと帰る。
それが終わると、すぐに1つ目の種目である、代表選手による100メートル走が始まった。
グラウンド中の空気を一気に熱くする種目で、応援席前、トラック周りには沢山の人が群がる。
自分の連合の代表が勝つたびに大きな声援が起こっていた。
オレンジ連合はここではいいとも悪いとも言えない結果を残す。最高記録は12秒台だった。
その後すぐに自分が出る4種目目の参加者招集がかかり、その間の種目は見れなかった。
綱引きとタイヤ引き。前者は去年、後者は一昨年にやった学年種目だった。懐かしかった。
4種目目、題して「走れムカデ!」は、前半を板の上を5人がムカデのように歩き、
後半は5人6脚で走るというもの。事前練習を招集後待機時間で行い、調子はまずまずだった。
しかし本番、ムカデは良かったものの5人6脚で中央の転びやすい人が何度もつまずき、
結果は3位で終わる。練習で走れるまでになっていたのに、これは悔しかった。
その後3年女子の騎馬戦、クラス対抗リレーなどで午前の部を消化。
今年は去年のように喋っているよりは競技の観戦に夢中になっている時間が多かった気がする。

午前の部が終わると連合パネル前で記念撮影。
その後3度だけ次の種目、クラス競技である「みんなでジャンプ」の練習をした。
(参照:#750『足を失った』)
30回を越えたらクラス全員に焼き肉をおごる、
という担任の言葉を元にクラスの士気は上がっていた。
時間の都合で、「1回だけ」という提案。その1度の記録は、5回だった。
「もう1回だけ!」という提案。「これ一回だから、集中しようみんな!」
全員が集中したらしい甲斐があり、2度目の記録は31回だった。歓声が上がる。
これを本番に生かせば焼き肉は食べられる。むしろ優勝もできるのでは?
だれもがそう思ったろう。昼食はすぐに終わり、午後の部に突入する。

「みんなでジャンプ」は全員参加種目。故に、1,2年の同じ連合のクラスもやる為、
3年は最後、3番目の挑戦。それまでは後輩のジャンプを見守る形となっている。
1年生は、連合内、つまりオレンジ連合の1年はかなり下手だったが、
全体的にもあまりレベルが高いとはいえなかった。オレンジの記録は1桁だった覚えがある。
学年最高記録は24回。
「こりゃあ行けるって、絶対」
誰かがつぶやいた。優勝のことだろう。
2年の番になる。オレンジの2年は、士気は高いが一部下手な人で記録は3回前後を彷徨う。
それでも一度は16回を記録。去年の自分達とほぼ同じ記録だった。
それでもまだこれを越えられると思った。成長していること、
そして今まで積み重ねた練習の量を改めて噛み締めた。3年の番を迎える。
全員で肩を組み輪を作る。中心に一人入る。
「先生の財布空っぽにするぞーー!!」
「おーっ!!」
耳が痛いほどの掛け声。多分一番クラスが『一致団結』したのはこの瞬間だと思う。
開始のピストルの音。
記録は「連続最高記録」を制限時間5分の中でいかに作れるかが勝負になる。
しかしピストルがなったあとは「5分」など数えている余裕は無かった。
飛んで、誰かが引っかかって、を繰り返す。数回までは5,6回で引っかかり、
去年のような過ちをまた繰り返してしまうのかと思ったその矢先の事だった。
おそらく残り2分ぐらいだったであろう時に、突如として15回を通過。
が、18回でいつも引っかかる場所よりはやや中央寄りの所で誰かが引っかかったらしく、
記録は止められる。最高記録は18回のまま、アナウンスの残り1分です、という声を聞いた。
流石に笑っては要られなくなる。数秒、縄回し役が休み、
「みんな落ち着いて!これ一回、集中しよう!」
練習の時とほぼ同じ事を言った。その声には焦りの色が伺えた。
残り1分、と言われてから10秒経っただろうか、再開し回し始める。
これが事実最後のチャンスだった。それは誰もが分かっていたはずだ。
10回を越える。ここまでは通過点だ。しかし、食後とあって横腹が痛む。
だがここで倒れたら大きな責任を背負わなくてはいけない。間違っても引っかかれない。
20回を越え、見ていた1,2年から驚きの声があがる。
誰かが、
「いける!」
強く、短く、叫んだ。
25回を越え、カウントしていた声はさらに大きくなる。
ここまで来たら絶対に30越えよう、としかし、
27回目を飛び終わった直後の瞬間、縄が変に揺らいだ。誰かが引っかかったようだった。
みんなが天を仰ぐ。同時に終了合図のピストルがなる。

できなかった――。
どこから見ても先程よりクラスのテンションは下がっていた。応援席へ戻る。
3年分の結果がスピーカーから聞こえた。
「ただ今の最高記録は、3年6組の――」
その時、今までの何よりも大きな歓声が上がった。オレンジ連合応援席は歓喜に包まれた。
「やっきにく!やっきにく!!」
という焼き肉コールが始まった。担任はその場にはいなかったが。
『30回を越えたら』という目標は忘れられ、しばらく拍手と共に焼き肉コールは止まらなかった。
結局、全学年最高記録は2年生の34回。本当の最高記録には届かなかったが、
それでも学年最高記録という位置。悔いは勿論あるが、大記録には違いない。
いつしかその空気も冷め、次の種目が始まった。

次に関わるとしたら3年男子種目の騎馬戦だが、騎馬を組まないと参加できない関係で、
僕はちょうど「あまり1」になったため出場はしなかった。
正確には決める時点で「あまり1」だった人と立場を交換して貰った。
毎年必ず怪我人が出るとのことで、帰り、足に負担を掛けることを考えると恐くてできない。
といってもまさか女子に混じって応援するわけにはいかないので、
日陰や校舎内水飲み場で暇を潰していた。
後悔はしたようでしていないようなあやふやな気持ちだが、多分後悔した。
退場後、出場者に色々話を聞いてみたらボロ負けだったものの楽しかったという。
もう一度やりたい、そんな声も聞いた。
午後の部の残りは白熱のリレーで締めた。オレンジが1位になることは、なかった。

閉会式。
校長の要らない話の事はさておき、結果発表の時間。
色々あるが、オレンジ連合が唯一取ったのは「パネル・連合旗・Tシャツ総合優秀賞」。
つまりパネルの評価点+連合旗の評価点+Tシャツの評価点が全連合1位だったらしい。
しかし今年からの新しい賞の上、あまりにも突然なので誰も声を上げたりはしなかった。
後に聞いた話では、パネルでも連合旗でもTシャツでも、すべて各々で1位は逃したが
どれもが2位か3位だったとのことだった。
はっきり言ってどれかひとつに集中してくれた方が嬉しい。なんだか悔しい。
ちなみにパネルはジャンプコミックス「ONE PIECE」の38巻表紙の左のキングブル。
ソドムだったかゴモラだったか、メガネをかけた方+小さな別のキャラクター。
優秀賞は噂では美術部部長が色塗り、原画は専門学校のデザイン系専門の人のものだとか。
優勝できるはずがない・・。Tシャツについては優秀賞のものを見たがあまり納得できない。
毛筆で「薫」と書いてあって、その字の中に白抜きでクラスの生徒の名前があった。
手間が掛かるだろうが、ぱっと見ではT君がデザインした方がいいと思う。
と思う、というより、みんなが後に口々に言っていた。
総合結果ではオレンジは4位。入賞圏をギリギリ逃した。これも悔しい。

平成18年度体育大会は幕を閉じた。


僕達が歓喜を生んだ時、誰よりも何よりも太陽が生むような「光」に近づいていた気がする。
4位だろうが何だろうが、輝いていた気がする。

今日の日記を「」の分類に入れるほど、楽しいものだったと思う。
特にあの5分間の奮闘、41人が一致団結した瞬間。


――ところで解散後、徒歩で帰るのを覚悟して校門を出ようとしたら担任とすれ違った。
冗談で「自転車壊れたんで、車乗せてくれませんか?」と言ったら承諾してくれ、
二者面談まがいとはいえ足を痛めずに帰ることができた。

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