#3100

高校生の私へ贈る五十選


何も考えず、ゲーム趣味本格化の時代を走ろうとしている高校時代の自分へ。
僕は今、君が高校時代を高校生らしく生き抜かなかったおかげで、
大学を卒業してもなお、そのゲーム全盛の時代を中途半端に抜け切れていない。
君の時代に培った興味の幅が足りなかったため、
それ以外の事に対する好奇心を失ってしまった。
信じられないかもしれないが、
今はもはやゲームに対する熱意さえ人並み以上であるという自信を失っている。
それだけじゃなく、自信が足りず、卑屈であるという事から抜け出せないがために
あらゆる問題に突き当たって、成長が止まってしまっている。
その代わり数多くの音楽との出会いがあり、それだけが心の支えになっている。
こうなってしまったのは、専ら君が悪いのではなく、
本当は大学時代の自分に原因がある。
だからこそ、今の僕は君が羨ましくて仕方がなく、
ついに高校時代に考えてみて欲しかったと思う事を書き出すにまで至ってしまった。
とても堅苦しく、読みにくい文章かもしれないが、読んでもらえれば幸いである。

*  *  *

◆1
高校の勉強の目的は主に二つある。
一つは、好きなものはこれだという事を公で言う自信を付けるためのもの。
もうひとつは、言われた課題を定刻までに処理できる自信を付けるためのもの。
赤点を取る事を暴露するという事は、それらができない事を自慢するようなものだ。

◆2
理由もなく勉強ができない時の最終手段は、
学校のテストや模試や受験が、クラスメイト全員参加のゲームだと思う事。

◆3
進歩は退屈と余裕が合わさって生まれる。

◆4
自分の考えをメモする事は、主要科目の勉強くらい大切だ。

◆5
読書は他人のいろいろな体験を疑似体験できる力を持っているという点では大事だが、
それは当人の体験には遠く及ばないだろう。
何もしたくなければ本を読めばいいし、本を読みたくなければ何かすればいい。
他人の世界に触れておいて得することはあっても損する事はそうそうない。

◆6
「頑張れば出来るのに」は、決して褒められているのではなく、
むしろ「君は他と比べて相当に行動力がない」と注意されていると思うべきだ。

◆7
自暴自棄な自分を演じて人の注目を浴びた後、君は何をするつもりだったんだ?

◆8
特に他人が関わる物事の場合、前回の手法で今回も上手くいく事はまずない。

◆9
「去年の自分の方がよくできていた」という考えが、
現実をつまらないものにしていると気付けば何かが変わるかもしれない。
少なくともそれは高卒後五年間毎年のように言っている。

◆10
自己表現は他人の目に触れてようやく完成する。

◆11
一番好きな物事を遠慮無く話せる相手と出会えたらきっと人生は変わる。
青春時代はそのための猶予期間なのかもしれない。

◆12
子供心を維持する努力は無駄にはならないが、
年を取りたくないという気持ちは時間の損失に繋がっていく。

◆13
現状で満足しないという気持ちが長続きした物事ほど良い評価を貰いやすい。

◆14
嫌いな人に確信を突かれてさらに自信を失うよりは、人の話を聞かない方が得策である。

◆15
クラスメイトはあくまで特定多数の人間達でしかないから、
君みたいな立場で唐突に全員を信用したように思い込むのはとっても危険だ。

◆16
卒業文集には何を書いても後悔するだろうから、何を書いてもいい。

◆17
流行は追わないべきだという考えにはもっと自信を持っていい。

◆18
二者択一の問題を数秒悩んで決めるような事は「考える」とは言わない。

◆19
周囲の危機感を読み取り間違えると大変な事になる。
受験が近付いた時、それを信用するか、従来の自分を貫き通すかで進路は大きく変わる。

◆20
大切すぎるために、最後までとっておこうとする精神は、
結果的に大切なものを遠ざける事になる。

◆21
完璧主義は天才にとっては進歩の種だが、凡才にとっては欠点でしかない。
それを受け入れる事は難しいが、
受け入れない限り永遠に理想と現実との間に存在する亀裂が広がり続けていく。

◆22
絵を描く練習をする事は無駄にはならない。

◆23
「自分」は「自分が知っている人達」の表面をかき集めた集合体だから、
あながち「他人」はどうでもいい存在とも言い切れない。それが例え嫌いな人でも。

◆24
大学を卒業すると、周りの人間はその専門知識を蓄えた人間として自分を見る。
その事を学部選択の時に少し考えてみてもいいかもしれない。

◆25
人は内面の醜さが外面に浮き出るようになっている。
外見などどうでもいい、と考える事は、内面の評価を過剰に落とす事に他ならない。

◆26
自分が勉強をした分だけ他人に勉強される。

◆27
知らずうちに真似される事は実は名誉な事だ。
しかし、それを知った後、こちらから真似させようとする事はとても不名誉な事だ。

◆28
今やっているそれは、未来の為か、過去の為かという分類ができる。
前者は他人の目に良く映るが、向上心がないと動かない。
後者は自分の為にしかならないので風当たりは悪いが、心地よさはある。
どちらも否定できるものではないが、後者ばかりの生活になると苦しくなっていく。

◆29
生きる力があると、いろんな事を憶えておこう、という気になる。

◆30
君はいろんな記録を手元に置こうとしているが、
それよりももっと、なんでもかんでも取っておいて欲しい。
今の僕にとっては、君が取捨選択した時に捨てた少ない思い出の方を
むしろ取っておいて欲しかった。

◆31
「世の中はつまらない」という人の目に映る世の中はつまらない。
「世の中はおもしろい」という人の目に映る世の中はおもしろい。

◆32
徹底的に何かをしようという気持ちがまっすぐ働けば大きく進歩できる。
ただし、それはマイナスの意味でも言える事だ。

◆33
現実の方から恋愛の機会が飛び込んでくるのは高校時代がピークでおそらく最後。
このことを君が信じられれば僕の人間関係の歴史は大分変わっていたかもしれない。
君の周りに今当たり前にいるクラスメイトの女の子のような存在は、
高卒後は出会えたら奇跡というくらいに希少な存在になる。

◆34
疑う事で強くなれる時と、疑わない事で強くなれる時がある。

◆35
人は、ある事をしろと言われた時に別の事をしたくなる習性があり、
何もしなくていいとなった時に何もできなくなる習性がある。
制限されているという事は、場合によっては無制限の時よりも多くを生む事がある。

◆36
想像力は「これはどうでもいいや」と思った時には全く働かない。
想像力は使わないと衰え続ける。

◆37
人や、それが生み出した物は簡単には否定できない。

◆38
人のやる気を最大同時に100個消費できる燃料として考えた時、
人は手持ちの燃料を好きな方に多く振り分ける。
多くの場合、均等にさまざまな事に燃料を振り分ける事は効率が悪い。
思ったよりやる気が出ないと感じたときは、
今関係ない何かに燃料を注いでしまっている可能性があるのだと考える事ができる。
より多くの燃料を一気に燃やすのには訓練が必要で、
模試や受験はある意味その訓練と言ってもいいのかもしれない。趣味もまた然り。

◆39
何かを自分だけができないと思い悩んでいる時は、「それができないのが自分らしい」
と思わせる過去の記憶が邪魔をしている可能性がある。

◆40
議論の終着点に二者択一を求めるのは中身を理解できない人の為の仕組みであって、
実は肯定か否定かだけで終わるような議論というのは、
議論が成り立っている時点でほとんど存在しない。

◆41
大学は小中高の延長ではなく、勉強が好きな人の為の機関である事を忘れてはならない。
中途半端なまま入ると、高校よりもずっと具体的に「やる気がない人は辞めればいい」
という冷たい目線を浴びることになる。

◆42
小中学校時代の思い出を整理して形にするのは、高校時代の義務だと思う。

◆43
恋愛は鏡を見る事、それは事実。偶然の産物である事、それもおそらくは事実。
でも、それでも結局、試しに行動してみないと成立しようがない。
恋愛感情というものは単純な思春期の生理ではなく、巨大な親近感だと思う。
異性を崇拝している限り恋愛は成就しない。……僕もまだ、偉そうな事は言えないが。

◆44
ものを否定し、遠ざけたくなるのは、ものが悪いのではなく自分自身の好奇心不足だ。

◆45
ものを肯定し、近くに置きたくなるものの数が器量の種になる。
しかし「広く浅く」の後者の方を意識してしまうと、それは器量にはならない。
興味を持ったなら徹底的にそれを見ようとするのが望ましい。

◆46
「考えるより先に行動するべきだ」と言う人がいる。
それを実践したとしても、結局人は行動する前に考えている。
その言葉には、高校時代への羨望の眼差しが込められているのかもしれない。
それほど、十代終わりまでの行動はいろいろな価値を生み出すという事だ。

◆47
隠しステージが一番凝っていて評価されるのは出来のいいゲームの中だけの話で、
人は一番好きなものを隠し続けても二番目がそれにすり替わるだけで良い事はない。

◆48
弱い人は、よく嘘を付く。
嘘は悪意から生まれるものではない方が圧倒的に多い。

◆49
早起きは三文どころではない利点がある。

◆50
ここまで書いた事は、高卒後「なんでこんな当たり前の事に気付かなかったんだ」
と毎日のように後悔している事柄である。

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