#4587

監視文化時代


あんまり巨大掲示板絡みの話題は書くべきではないと思うのですが、
自分自身の、そういう「匿名の声」に対する心境の変化があったので今回は敢えて書き残します。

自分はもう巨大掲示板系文化からは遠ざかって久しいのですが、
しかしいわゆるまとめサイトを読んでいなくても各種キュレーションメディアに目を通していると
少し大きな話題は今でも嫌でも目に入ってきます。
特に東日本大震災以降のここ五年くらいは、
匿名掲示板や半匿名SNSが「世間一般の声」として、その地位をかなり高めてきたように思います。
ネットの批判を恐れて企業側、あるいは公的機関側が首を引っ込めるのも珍しくなくなりました。
最近はさらにその矛が個人に向くこともあり、
発信者は誰でも匿名の声に気を向けなければならない風潮が出来上がったように思います。

……と、このまま匿名メディアの是非を問う話題を広げていくと
とても数千字程度では語り尽くせないし自分の知識が付いていけないので中間を端折ります。
端的に言えば、今までは自分はまとめサイトや匿名掲示板などの情報発信に対して、
「少なくとも数千人は同意できるであろう意見」として比較的安易に飲み込んできました。
アルバイトが勤務先で写真を撮っているのを「悪いことだ」と非難するのは当たり前のことです。
少なくとも、自分が勤務先で同じ事をやっている人がいたら、
おそらく同じような立場の人と一緒になって責める側に回ると思います。
匿名ユーザー群が意見する際に問題になるのは数的圧力と当事者との距離感であって、
額面通りの言葉だけ取れば、いつもよく正しいことを言っているなと思います。
ところが今回、額面通りの言葉から見た不特定多数が、とても胡散臭く見えるニュースがありました。

日本文学振興会が「人生に、文学を。」プロジェクトなるものを発足させた際に
各紙の広告に出したキャッチコピー、

『文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)』

という文言に「アニメを馬鹿にしている」と批判が集まり、
それを受けて当該団体がキャッチコピーを取り下げお詫びを発表する事態に発展したというのです。
自分は批判が集まったらしいとしか聞いていない部外者なので、
そもそもそのニュース自体を信用するのに若干問題があることは承知しているのですが、
これを聞いてまず最初に、ついに匿名ユーザーはこんなところまで難癖を付けるようになったんだ、
と少しばかり恐ろしくなりました。

そもそもこのキャッチコピーを読んで、真っ先にアニメが馬鹿にされていると思うだろうか?
アニメを馬鹿にされていると思えるのは、アニメばかりで他の文化に興味を持てないことに
少なからず劣等感があるからこそなんじゃないのか?
本当にアニメ文化に愛着を持っているのなら
「アニメでも人生を想像できる名作は沢山あるのに」と言っていれば良いだけなのではないか?
つまり、結局のところわざわざこんな炎上騒ぎにしているところに
「アニメは馬鹿にされている」という事実無根な情報が不必要に拡散される原因があり、
その原因の向こうに自称アニメ好きな一部ネットユーザーの “面倒臭さ” があるのではないか?

基本的に匿名コミュティが起こす騒ぎというのはこういう特定個人批判ばかりですが、
今回はキャッチコピーを出す側が狙っていたのかあるいはたまたまなのか、
批判する人の属性が浮き彫りになっていただけに考えさせられる一件でした。
ここまでの一連の流れを読み切った上で出した炎上マーケティングなら見事なものですが、
傍から見てあんまり気持ちの良いものではないですね。

個人的には文学って別に平成文化と張り合わなくても好きな人は好きであり続けるだろうし、
それは公益財団法人が頑張らなくても勝手に次世代に受け継がれていくと思うのですが、
それでも他の文化と比較して憚らないのはやっぱりお金の絡みがあるからこそなんでしょうかね……。

あと、今回の件は単にネット上の匿名ユーザーが云々というよりは、
ネットで多数が集まるところなら何でも群がる
いわゆるまとめサイト系メディアから情報を吸い続けることの危険性も少し感じました。
個人メディアを圧倒的多数で誹謗中傷する匿名発信者のことを
ネットイナゴとか呼んでいた時代もありましたが、
今はむしろ各種キュレーションメディアこそがある意味ネットのイナゴ的存在なのかもなぁ……。
そういえば一時期あったまとめサイト排斥運動ってどうなったんだろう。

そんなわけで、ネットの情報収集について考え直そうかと思わされた一日でした。