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紙の上の樹海


校正というお仕事があります。
書かれた(入力された)文章の抜けや誤植などを見つけて指摘するという編集業界の基本作業。
仕事している姿そのものは地味かもしれないけれど、
実際に仕事をしている人から見た校正紙はまるで小さな樹海に入り込んでいくようなもので、
膨大な文字群に異物が混入していないかを、文章を「読む」以上の観察眼で「視て」いきます。
校正は通常一度では終わりません。
最初の校正作業は初校と呼ばれ、まずはざっくりと見つけやすい間違いにアカを入れていきます。
おおよそ異物を取り除いたら別の校正者による二校が入ります。
初校で見逃すような細かい間違いを取り除いてさらに文章の純度を上げていきます。
特に慎重を期するような原稿の場合はさらに三校、四校……と続き、
最後の校正は念のためもう一度見たいという意味で「念校」と呼ばれます。
世に出ている身近な一般書籍、論文、パンフレットなどなどあらゆるものは
まさにこの校正という仕事を通して磨かれた文章なのです。

とはいえ当然ネット界隈なんかはこの校正を通さずに世の中に出ているような文章も多いわけです。
たとえばこのブログなんかがそうで、これを校正してみたらどうなるんだろうと、
試しに『Tomarigi』という校正支援ツールを導入してみました。
(参照1 [公式]:Tomarigi – 日本語表現法開発プロジェクト)
(参照2 [導入解説]:文章構成ソフトtomarigiの使い方 – 急急如律令
直近のエントリーで試してみると意外と単純な誤字・誤植は少なかったのですが
(でも全エントリーを通せばそれなりの数があるだろうとは思う)、
それよりもむしろ指摘されていたのが不要な漢字変換、そして指示語と連用中止法の多用でした。

まず不要な漢字変換というのは、
漢字をやたらめった使うことで視認性が落ちたり文章が固い印象を持たないように、
副詞や形式名詞など文章に重きを置かない部分、それ単独で意味を持たない言葉に対して
むやみに漢字を使わないという日本語の文章構成上のルールがあります。
副詞であれば「殆ど」「大凡」「嘗て」「最も」といった漢字は使わないとか。
形式名詞とは連体修飾語とセットで使うがそれ自体は意味を持たない体言のことで、
「~すること」の「こと」、「今日のところは~」の「ところ」、「そのため」の「ため」など。

指示語は言うまでもないですが「これ」「それ」「あれ」「どれ」のこと。
このブログではどちらかというと連体・副詞変化で使うことが多いですかね。
連用中止法とは、連用形(「青く光る」の「青く」など次の用言に接続する活用方法)のうち、
次の用言を繋がずにそこでいったん文章を中止させるという文法の一種。
例えば「すぐ寝て、すぐ起きた」の「寝て」がこれにあたります。
連用中止法は羅列的な長い文章を引き締める役目があるのですが、
多用するとそもそも一文が長くなりがちで、それが文章構成マナーとしてはアウトみたいです。

あまり漢字を使いすぎないというのは最近少しずつ意識してきたことで、
例えば「こと」や「もの」なんかは
少しずつ漢字・かなの使い分けに注意して使えるようになってきたようには思っていますが、
それでもまだ徹底できているとは思いがたいです。
あと上に挙げたもののうち「指示語の多用」は個人的には癖みたいなものなんじゃないかと。
あまりにひどいときは文頭に「そ」が何行も連続したりします。

執筆のルールって意外と奥が深くて、ここには書き切れない独自ルールや
一般的であると思われるルールが徐々に浸透してきた経緯、あるいは癖などは無数にあります。
校正ツールを通したからといってそれらがすぐ浮き彫りになるわけではないのですが、
少なくともごく基本的な文章チェックはこういうツールを使うのもアリかもしれませんね。
自分用の文法ガイドラインなんかを明文化できたら面白そうだけど、まぁ無理だろうなぁ。
むろん、すべて校正ツールに従うべきだとも思っていません。
たとえばこのブログではたまに口語体も使うようにしていたり、
あえて「ら抜き」言葉を使ったりして文章をたまに砕こうとする傾向がありますが、
それは読みにくさを取っ払うためのひとつの方針だと考えています。
これからも読みやすい文法は追求しつつ、
それはそれとしてこのブログでは自分なりの指針を作っていきたいところです。