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知りたがりのフレンズ


文化


(画像引用:けものフレンズ 12話「ゆうえんち」 – ニコニコチャンネル)
今年02月頃からだったでしょうか、話数が進むごとに加速度的にネット上で話題になり、
気が付けば数年に一度というくらいの空前の人気を誇るまでになっていたアニメ、
けものフレンズ』(2017年春季、けものフレンズプロジェクト制作、全12話)。
少し前にもその盛況ぶりをここに書きましたが、
遅ればせながら、アニメ配信サイト『ニコニコチャンネル』にて
先月中旬頃に1,663円+540円で全話視聴してきました。以下ネタバレ注意。

*  *  *

不思議に満ちあふれた超巨大動物園「ジャパリパーク」では、
毎年どこかで不思議な力によってどうぶつがヒトの女の子の姿になって生まれ変わるという。
“さばんなちほー”で暮らす猫のフレンズ「サーバル」は、ある日名無しのフレンズと出会う。
大きなカバンを背負っていたので「かばんちゃん」と名付けられたそのフレンズは、
木登りができるわけでもなければ力が強いわけでもなく、いったい何のどうぶつなのかがわからない。
かばんちゃんは自分がいったい何の動物かを知るため、
そして同じ動物の仲間を探すため、サーバルと共に「ジャパリとしょかん」を目指すのだが……。

*  *  *

大分前ですが、この作品はソーシャルゲームになったことがありました。
『メルクストーリア』のような横スクロール系だったと記憶しているのですが、
実はアニメ開始時点ですでにこのゲームはサービス終了しているんですよね。
アニメではこのソーシャルゲームを原作としているため、
ジャパリパークがどういうところなのか、何故毎年ある時期にフレンズが生まれるのか、
オープニングにもあるあのカラフルな煌めきは何なのか……
といった根本的なところの説明は何もないままに物語は歩き出します。
そのためソーシャルゲームをプレイしたことのない人間にとっては、謎だらけ。
それが話数を重ねるごとに少しずつ、考察の余地を残しつつも核心に迫っていきます。

『けものフレンズ』の良さは、精巧なアニメ描写力ではないし、声優の表現力ではありません。
むしろここ数年の日常系アニメと比べても構図や表現には今ひとつ安っぽさを感じます。
自分はむしろ、アニメそのものとして見たときのクオリティよりも、
視聴者にも考えさせる余地を残した絶妙な世界観の説明手法、謎解き的な進行、
そしてなによりもキャラクターにある底知れぬ前向きでまっすぐな純心を、
余すところなくストーリーで魅せているところに良さを感じます。

「『困難は群れで分け合え』」
「おいしいものを食べてこその人生なのです」
けものフレンズのキャラクターが言っていることはとてもシンプルで、当たり前のこと。
でも文明が残されているようで残されていない「けものの世界」で発せられた言葉だからこそ、
その当たり前の大切さを再確認させてくれるようなシンプルな説得力があるのだと思います。
現実世界はもうあらゆる問題が煩雑に絡み合っていかんともしがたいけれど、
それをとことんまで紐解いてもなお残る大切なことって、こんなにシンプルだったんだな、と。
誤解を恐れずに言えば、「ヒトは何のために生きるのか」という重すぎるテーマを、
極限までそぎ落として深夜アニメの形に乗せてしまったのが本作であるように思います。

個人的にすごく良かったなぁと思った点。
まずエンディングテーマですね。最終話までエンディングで鳥肌が止まりませんでした。
最初は「本編と歌詞はあんまり関係ないけど、すごくいい曲だなぁ」という認識だったのですが、
本編の世界に浸っていくと、あるキャラクター同士の絆そのものを指している気がして、
ああエンディングにも繋がっていたんだなぁと思うと、
11話のラストでもう完全に打ちのめさせてしまいました。ただ良い曲というだけでなく、
きちんと本編との関連性を見出せるようになっているのは凄いと思います。

それから新しいフレンズが登場した際に
生物分類とともに名前がテロップ表示されるのも面白いなぁと思いました。
以前も書きましたが、公式サイトではアニメで登場した以上のフレンズについての
生物分類・学名・保全評価まで掲載されており、制作のこだわりが窺えます。
余談ですが自分はこれを見る少し前に偶蹄類が今やクジラ目と一緒になっているということを知り、
きちんとヘラジカが「哺乳網クジラ偶蹄目」と紹介されていたときには内心ニヤニヤものでした。
また、トキやUMAであるツチノコのフレンズが出てくるなど、
アニメ化にあたってはあえて身近ではない絶滅危惧種や絶滅種をモデルにしているところに
制作サイドのどうぶつ愛を感じます。
主人公格のサーバルキャットもネコ科ではありますが日本ではあまり身近ではないですしね。

一番最初ぱっと見たときは、いわゆるケモナー向けのマニアックな作品なんじゃないか、
という印象でしたが、実際はそんなキャラクターの外見で売るといったレベルはとっくに通り越した、
いろいろな愛に満ちあふれた良作でした。
こんなに気持ちの良い余韻に浸れる作品に出会ったのも久々なんじゃないかと。

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