#5028

理不尽という名の坂道


身バレを防ぐために敢えて時期をずらして書きますが、
少し前くらいに自分にとって二人目の後輩として仕事をしていた人が辞めていきました。
またしても後輩に先を越された形になり、
この定着率の低さはいったいなんなんだろうと改めて思います。

一人目の後輩が若干年上だったのに対して、二人目は若干年下でした。
以前にも年配の人たちに「甘やかしすぎなんじゃないか」と言われてしまうくらい、
自分の責任下で一緒に仕事をするときは懇切丁寧に説明してかつ定時かっきりまで頑張ってもらう、
というスタンスで一緒にやってきました。
むろん仕事量次第では必ずしも定時に終わる量では済まないことも間々あるわけですが、
そんなときに「今日は何時まで残業お願い」とこちらから言うのではなく、
「私は何時までならできます」と言って貰えるような信頼関係を築けたらいいな、
という気持ちもあって、基本的には全面的にフォローする立場に回りつつも、
要所要所で工程の一部を切り崩して一任して、責任感を少しずつ育てていったつもりでした。
しかし結局それは失敗でした。

会社の中でも比較的長くかつ近い距離で接してきた自分からみれば、
後輩は特にマルチタスクにおいて人並みのキャパシティを持ち合わせていない性分でした。
極端な例えで言えば、業務中に業務とまるで関係ない電話の応対をすると、
電話を切った途端に「何してたんだっけ?」となってしまうタイプ。
瞬間記憶力に若干のハンデがありつつ、
一生懸命さを演出して周りからの助けを借りることでそれをカバーしていくような、
俗っぽく言えばドジっ子属性の人だったように思います。
話していくうちにそれが徐々に分かってきたので、
自分個人としてはこの人に(この会社での)一人前相当の仕事を任せるには
相当時間がかかるんじゃないか、という実感がありました。
だからこそ無理を要求しないように、本人に分からない程度に増やすよう配慮したつもりでした。
二年目になると慣れもあってかある程度成果としては出てきていて、
今年度の繁忙期は仕事量が溢れているのを見てその一部を抱え込んでくれることもありました。

ところが、会社側が後輩を人件費のかかる一人の従業員としてみたとき、
その成長スピードはどうやら期待に反するものであったらしく、
今年度に入ってから急に上司から直接指導する采配に変わり、
本人から話を聞く限り、それが辞める引き金になったようでした。
最後の一ヶ月はもう完全にどたばた劇で入社当初のような雰囲気はまるでなく、
そのまま走るように最後の一日に去っていきました。
本人の本意でないであろうとはいえ、
終わりよければ……という言葉の逆を地で行く人だったと思います。

今の会社で、会社の求める水準を超えられなかった人は
自分が見る限り今回のように何かが決壊していきどうしようもなくなり、
その結果辞めていくというパターンが今のところ十割で円満退職は皆無です。
そう考えると結局のところ今回も環境が辞めさせたようなものであり、
この一件が今の会社がまだブラック寄りなことを如実に表しているのではないかとも思うのですが、
いずれにしてもあまりにも跡を濁す辞め方だったものだったから、
今まで自分が苦労して丁寧に接してきたのはなんだったんだろうと、
さすがにちょっとショックを隠しきれていません。
最後の最後に会話したときは何かもごもごと「迷惑をかけてしまって……」
というようなことを言われ、本当に一杯一杯だったんだなぁということから、
もしかして自分はとても理不尽なことを要求していたのではないかと、
なんだか申し訳ない気持ちになりました。

と、自分のことを棚に上げてこの一年くらいみてきた後輩とその顛末を書いていきましたが、
結局のところ、どうやって接するのが正解だったのかは自分の中で決着がついていません。
今のところ確実に言えるのは、どんなに自分の中で納得のいく範囲で仕事をしてもらったとしても、
その自分自身も会社の手のひらの上であることは雇用契約上否定しようのないところで、
会社側が求めるものと自分の求めるものが食い違っていれば
こちらがどんなに足掻いたところで後輩を擁護しようがないということです。
自分が本当するべきだったのは、後輩の限界を把握することよりも会社の要求を理解すること、
そしてあの人はここまでが限界だ、
ということを会社側にうまく説得することだったのかもしれません……が、
それをやったところで今度は仕事が捌けなくなっていたのも確かで、
この辺は内部の人間のキャパシティが云々というより
受注量と従業員数のバランスの取り方が下手な会社側に原因があるのではと思ってしまいます。
そもそも本人のキャパシティ以上を求めるのが組織の在り方としておかしいよね、という。

今回は長期的な観点から「責任の分配」にばかり意識を向けていましたが、
もっとシンプルに「自分にできて後輩にできないことをなくす」
ということに注力していたらもう少し結果も変わっていたかもなぁ、という後悔はあります。
そもそも赤の他人たる自分が後輩の力量を勝手に決めつけすぎていたのでは、とも。

でもこういったことって自尊心その他を考えるとなかなか難しいと思うんですよね。
やっぱり自分も、後輩に頼られるのがどこかで心地よいと感じるし、
それは自分にできて後輩にできないという関係性があってこそのこと。
それを崩したら一方的に頼られる関係というのは終わるわけです。
こういったことに執着していたつもりはまったくないのですが、
無意識下では頼られる関係を崩したくないという気持ちがあったかもしれず、
それが後輩が会社の求める要件をクリアできなかった遠因となったとしたら、
自分にも非はあるのかなと……。

また自分にしかできないことを後輩にやらせないことで、
自分にはできないことを後輩にやってもらう大義名分を得ることができて、
そういった棲み分け方が自然とできていたような気もします。
今振り返ってみれば、その役割分担を決めるのは自分の主観的基準が強かったのかなと。
後輩ができる・できないという判断基準がやや弱かったかもしれない。
でも「誰もやりたがらないからやらなくていい」というわけにもいかず、
後輩の意見をもっと尊重すれば良かったという単純な話でもないのでしょうが……。

さて、このままの人員だと年度末繁忙期はデスマーチ直行間違いなしなのですが、
果たして三人目と巡り会うのはいつになることやら。
そしてそのとき、果たして自分は今回の反省を活かせるのかどうか……。
いやむしろいずれ自分が後輩のようになる可能性だってあるわけですからね。
なんにしても今回のことは会社にとっても自分にとっても、
そして後輩にとってもマイナスの大きい一年だったと思いますが、
本当に世の中からこういうことが少しでも減る雇用の仕組みってできないのかとつくづく思います。