#5168

ゆのもきゅ中毒


音楽


ゆのもきゅ

(2017年、Yunomi、Miraicha Records)
(アルバムNo.613、トラックNo.11866-11882、2017年12月〈第124期〉新曲)


かわいい系フューチャーベースを中心に展開するできたてほやほやのレーベル、
未来茶レコーズの主宰が送る記念すべきファースト・アルバム。

久々に衝撃的な一枚と巡り会ったな、というのがまず率直な感想です。

自分が2008年末にいわゆるテクノポップと出会って以来、
「かわいい系×電子ポップ」というキーワードは好きな音楽ジャンルの大きな柱として、
それは主にcapsuleの中期作品を軸に裾野を広げ続けていました。
新世代テクノポップは細かく分けると(ネオ)渋谷系、
フューチャーポップ、あるいは宅録ポップといたあいまいな定義のサブジャンルがあり、
それぞれのサブジャンルごとにいくつかのレーベルからリリースされていました。
これらテクノポップは十代女子文化のイメージをとくに電子楽器を駆使して表現しつつ、
でもアニメソングのようなあざとさや「作られたかわいさ」感はないという
絶妙なバランスが持ち味です。

今となっては1,186曲を数えるに至ったテクノポップライブラリですが、
しかし2015年頃から再三書いているように、
近年はそう簡単に新規アルバムを見つけられなくなりました。
2000年代に活動していたアーティストの大半は長らくアルバムをリリースしていないか活動停止、
あるいはハウス系やEDMなど「かわいい系」の雰囲気から逸脱してしまっています。
かといってテクノポップといえばここ、と言えるような大御所的なレーベルも存在せず、
新規アーティストを探すとっかかりもない。
そんなわけで個人的にはテクノポップはここ数年停滞していたところでしたが、
そんな矢先に見つけたのが今回の『ゆのもきゅ』というアルバムでした。

ここまで書いておいて言うのもなんですが『ゆのもきゅ』は純粋なテクノポップではありません。
冒頭に書いた通りフューチャーベースというまったく異なるジャンルです。
(これをKawaii Future Bassと名付ける動きもあるようで、
かわいい文化とこのジャンルを結びつけること自体は日本独自のスタイル)
しかし自分はこの楽曲の中で、
自分がずっとテクノポップを通じて追い求めてやまなかった「何か」を聴いた気がしました。

軸になっているのはプログレッシヴ・ハウス、いわゆるEDM系。思いっきり海の外の音楽。
しかしここぞというときには一気に和風テイストに転調するのが『ゆのもきゅ』節です。
かと思えばどこか星のカービィシリーズを思い起こさせる軽快な音の洪水と、
それをバックに歌われるあか抜けない感じのウィスパーボイスは
やっぱりなんとなくテクノポップとの共通項が多いように思います。
4曲目『インドア派ならトラックメイカー』の語るように歌う感じは
同じように「つぶやくように歌う」テクノポップメイカーHer Ghost Friendを想起させるし、
その絶妙なあどけなさはまさにcapsule中期作品のそれに近いものを感じます。
ただ十年前の楽曲群と違うのは、ネオ渋谷系のような「女の子が歌った女の子の歌」ではなく、
あくまでも作られたバーチャルキャラクターが作られた歌を歌っているようで、
歌詞の内容は若年女子の目線ではないというところでしょうか。
そういう点で従来のテクノポップよりはアニメソングや音ゲー文化などの現代若者文化に近いです。
とくに音数やBPMから言っても音ゲーとの親和性はかなり高いので、
そのうち音ゲー界隈からも同じような楽曲が登場するのではないでしょうか。

アルバム収録楽曲はかなりの粒揃いで、同じような曲調の楽曲はふたつとありません。
それ故にお気に入りを選びきる事ができず、
音楽再生数統計開始以来初めてアルバム全曲★3以上(★3以上はライブラリ全体の約1%)という
とんでもない記録が自分の中で樹立してしまいました。
今まで十年間で600枚以上のアルバムを聴いてきましたがこんな事態は初めてです。
おかげで去年末は一種のゆのもきゅ中毒とも言うべき症状に陥り、
がっつりアルバムを聴ける通勤路がこんなに楽しい時間になったのも久々の経験でした。

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