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おすすめエレクトロニカ十選 2019


音楽

不思議な音楽ジャンル、
定義としては「先進的・前衛的なアプローチをする電子音楽」ということになっていますが、
その音楽性は本当に多種多様で、もはやひとつのジャンルという枠を超えています。
鳴っているのか分からないほど静かな音楽もあれば、騒音よりもやかましい音楽もある。
息をのむほど美しい音楽もあれば、寒気がするほど不気味な音楽もある。
自分がそんなエレクトロニカの魅力に取り憑かれたのが2009年の話。
実は今年で、ちょうど十年を迎えるんですよね。

というわけで今年のアニバーサリー記念企画は、
いままでずっとブログで語ろうと思ってきたにも関わらず語ることができないでいた、
「エレクトロニカ」の世界について、十曲厳選して紹介していきたいと思います。

Once Weekly – The Flashbulb『Arboreal』
(2010年、Alphabasic、ドリルンベース、2012年07月投入)

美しく壮大なドリルンベース。
実は、2019年09月時点で2,787曲ある自分のエレクトロニカ・ライブラリのうち、
唯一のマイレート★5がこの曲だったりします。
自分にとってはエレクトロニカの代表的存在がこれ。神聖な音楽。
世界を七日で作ったという全能の神をテーマにした曲なのかな、と勝手に推測しながら、
いつも壮大な脳内PVを描きながら聞いています。
ドリルンベースにしては音数は控えめに構築されていて、とにかく聞きやすいのが特徴です。
The Flashbulbは躁鬱病の方で、リリース時期によって気性がまったく異なるのが特徴。
『Arboreal』はかなり安定していて美しい音楽が多いのでオススメです。

rae – Autechre『LP5』
(1998年、Warp Records、IDM、2010年03月投入)

あのレディオヘッドが影響を受けたと公言している、エレクトロニカ界の古参にして重鎮。
個人的にエレクトロニカといえばAutechreだと思っています。
Aphex Twinと違ってその音楽性は一貫して実験的であり前衛的。
聞き手を置いてきぼりにする勢いで展開されるわけのわからない音楽。
特に2016年以降は突如8枚組のアルバムを出すなど、意味不明さにますます磨きがかかっています。
基本的に、Autechreの音楽は理解することができません。
音の快楽、それだけを追求しているのだと思います。
今回紹介するこの楽曲は、実験的すぎるAutechreの中ではとびきり聞きやすい一曲。

8 Track Project Cut – Telefon Tel Aviv『Immediate Action #8』
(2002年、Hefty Records、IDM、2011年01月投入)

エレクトロニカを知ってしばらくは、このアーティストに猛烈にハマっていました。
二人組のグループでしたが、惜しくも2009年に相方が他界。
それをきっかけにずっと音楽活動は停止していましたが、
2019年秋、つまり今月、満を持して最新アルバムがリリースされる予定になっています。
Telefon Tel Avivといえば超名盤『Fahrenhait Fair Enough』が有名ですが、
ここでは敢えてミニアルバムより選出してみました。
Telefon Tel Avivの複雑怪奇なプログラミングが短時間で味わえる一曲です。
『Fahrenhait Fair Enough』は単曲というよりアルバムとしての完成度が高すぎて、
よくアルバム単位で聞いていましたね。この曲が気に入ったら是非。
ドリルンベース系統として考えれば、これでも比較的静かな方です。

4 – Aphex Twin『Richard D. James Album』
(1997年、Warp Records、ドリルンベース、2009年05月投入)

自分がエレクトロニカの世界に入るきっかけになった曲のひとつ。
Aphex Twinは生粋の変態(褒め言葉)であり、こういうガチガチのエレクトロニカもあれば、
『Avril 14th』のように美しいピアノソロもあり、アルバム全体に統一性がなく賑やかです。
テクノ・エレクトロニカ方面では絶対に外せない有名人であり、
エレクトロニカといえばこの人を挙げる人は多いですが、
決してAphex Twinの楽曲がすべてエレクトロニカというわけではないことにはご注意を。
この人の楽曲はジャンルという枠はとっくに飛び越えてしまっていると思います。

Yesterday – Lullatone『Little Songs About Raindrops』
(2004年、plop、トイトロニカ、2010年03月投入)

エレクトロニカを聞き始めるまで、
エレクトロニカという音楽はこういう音楽を指すものと思っていました。
確か、フリクションのCMのBGMに使われている楽曲がこんな感じで、やたら惹かれたんですよね。
そして行き着いたのが、日本のアーティスト、ルラトーン。
おもちゃで奏でられているような優しい音色が特徴的なこのアーティストのアプローチは、
かわいい系エレクトロニカとして、「トイトロニカ」と呼ばれています。
トイトロニカを中心に活動しているアーティストは非常に少ないので、
そういう意味ではとても貴重な存在だと思います。

re(a/c)h’ – Gel:『-1』
(2001年、plop、フレンチエレクトロニカ、2010年10月投入)

エレクトロニカ界隈って、こういう不気味な雰囲気の音楽を愛でる風習もあると思うんですよ。
前衛的で、決して聞きやすくはない。
むしろ、下手に初心者が聞くと気分が悪くなってしまうかもしれない。
けれど、何故かこういうものこそがエレクトロニカだって思うことがあるんですよね。
アンダーグラウンドな音楽であるからこそ、
未成年にとってのお酒のような、ちょっと背徳的な要素もあると思うんです。
とはいえこの曲は不気味系のなかでも格段に聞きやすい部類。
同アルバムの中にはしゃっくりの音を使ったものもあったりと、もっと意味不明な曲はあります。

Fortnights – Manual『Until Tomorrow』
(2001年、Morr Music、グリッチ・ノイズ系、2012年03月投入)

ギターのやさしいメロディーに乗せられる重低音と、プチプチというノイズ。
エレクトロニカは本来電子音楽ですが、
DTMが発達した今はむしろ生楽器を使うものが主流になっていて、フォークトロニカと呼ばれます。
それじゃあエレクトロニカと呼べないじゃないかというツッコミもありそうですが、
こうしたフォークトロニカには大抵、エレクトロニカならではのノイズやグリッチが乗せられていて、
それがエレクトロニカらしさを演出しています。
この曲はノイズ系の中では非常にシンプルで聞きやすい方です。
「ノイズだけが聞きたい!」という奇特な方には、
「ノイズ・ミュージック」というエレクトロニカよりもさらにアングラなジャンルもありますよ……。

Fairter – Michał Lewicki『Ton』
(2015年、Project: Mooncircle、ダウンテンポ、2016年02月投入)

2016年に突如出会ったエレクトロニカ。
久々にお気に入りと出会ったからなのか、何故かすごい衝撃的でした。
それまで全く知らなかったレーベル、アーティストから、すごい名曲が飛び出しているではないか。
なんというか、エレクトロニカとしての総合力があると言えばいいんでしょうかね。
言葉では上手く説明できない魅力が全体的にある気がしました。
2010年代後半から、「これだ!」と思うエレクトロニカはさっぱり発掘できなくなりましたが、
きっとまだまだどこかに光るものが隠されているんでしょうね。

Americans – Oneohtrix Point Naver『R Plus Seven』
(2013年、Warp Records、エクスペリエンス系、2014年09月投入)

これは、現代音楽と言えば良いのか、実験音楽と言えばいいのか……。
とにかく2000年代までには無かった、2010年代の新しいエレクトロニカの形です。
せわしなく急展開で、わざと取って付けたようなつぎはぎだらけの音楽。
まさに「踊れない電子音楽」としてのエレクトロニカを突き詰めたかのような楽曲で、
間違いなく新しい音楽なのですが、どこか懐かしい感じがする不思議。
自分自身が2010年代後半からあまりエレクトロニカの最先端を追いかけなくなったからなのか、
あるいはこういう音楽を発表しているアーティストがごく少ないのかは分かりませんが、
2010年代にふさわしいエレクトロニカというのはこれの他に出会っていません。

Daydreamer Featuring Piana – Lycoriscoris『From Beyond The Horizon』
(2011年、moph records、歌モノエレクトロニカ、2013年10月投入)

生粋のエレクトロニカファンに怒られそうですが、最後に歌モノも紹介。
エレクトロニカは基本的にインストが中心であり、ボーカルはほぼ入りません。
が、そんなジャンルで敢えて歌モノに挑戦しているアーティストもいます。
それがこの曲のボーカリストであるPianaさん。
包み込むように優しくゆったりとした音色と声楽は、どこか懐かしいような感じもします。
無機質なエレクトロニカの世界に少し疲れたら、たまに聴きたくなる曲です。
というかここだけの話、自分はこの曲がとてつもなく好きです。なんというか、神聖な感じ。
ちなみに他の歌モノエレクトロニカとしては、洋楽に「mum」というアーティストがいます。

*  *  *

以上10曲でした。
まだまだ紹介したいエレクトロニカはたくさんあるので、
また別の機会にさらなる十曲を紹介できればなと思います。
この記事が一人でも多くのエレクトロニカリスナーに届くことを祈りつつ……。

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