詐欺と断言してしまうのは若干語弊がありますが、大変な目に遭ってきました。
今住んでいる多摩地域が地元となんら変わらないくらい平和なので忘れていましたが、
東京は怖いということを改めて思い知りました。
遡ること二日前の日曜日。
エキチカでカフェを探していると、そこそこ綺麗な若いお姉さんに話しかけられました。
「今、結婚に関するアンケート調査を行っているんです。ご協力いただけると嬉しいんですけど」
これが通勤途中だったら間違いなく断っていたところでしたが、
休日だし時間に余裕もあるということで、なんとなく了承してしまいました。
アンケートの内容は本当に単純な結婚についてのアンケートだったので、正直に書きました。
書き終わると女性は嬉しそうに、
「よかったです! この辺、学生さんが多くて全然回答してくれなくて……。
良かったら、あとでお礼の電話をしたいのですがいいですか?」
勢いで言われたので、はいと答えてしまいました。
個人情報は慎重に取り扱っているのでと言われつつ電話番号と名前を書かされ、
その場では別れました。
そして、その日の夜遅く。電話がかかってきました。
アンケートに答えてくれたお礼を言われたあとは、なんだかすごくなれなれしく雑談が始まりました。
本当にコミュ力ある人って凄いですよね。どんどん相手のペースに引き込まれるというか。
こちらの意見も全肯定的に捉えてくれて、正直悪い気はしませんでした。
すると、事態は次の段階に進みます。
「今度の火曜日、うちのお店に遊びに来ませんか?
私と気の合う○○さんなら絶対楽しいですよー!」
聞けばお店は貴金属を専門に取り扱っていて、結婚の相談相手もしているのだとか。
でもそれなら相手がいる人じゃないと意味がないんじゃないかと聞いたら、
「独身の人だからこそエンゲージリングは必要なんです! それはお店で説明しますね」
結婚がどうのこうのという話は自分にはまったく縁のない話だったので、
相手もいない現状では時期尚早かなという気もしましたが、
せっかくなので行ってみることにしました。
ちなみに月曜日も「ちょっと寂しいから電話しちゃいました」と電話がかかってきて、
さながら恋人のような対応だったものですから、それに釣られてしまったというのもあります。
後で知ったのですが、こういう勧誘をする手口を「デート商法」「恋人商法」などと言います。
そして今日。場所は銀座のとある場所。
出発前にもモーニングコール?的な電話がかかってきて、
最寄り駅に到着したら電話してほしいと言われたので、そこでもまた電話しました。
軽く道案内されつつもお店へ。
担当してくれた人は街頭アンケートをしていた人、電話してきた人とすべて同一人物で、
曰く「私があなたの専属担当です!」とのことでした。
お客さん一人に対してスタッフが一人付き、相談相手になってくれるというシステムらしい。
お店に着くとまず来店アンケートを書かされました。
そこには誓約書のようなものもあり、「私は強引な勧誘で連れてこられたわけではありません」
「デート商法によって勧誘されたものではありません」等の項目にチェックを入れさせられました。
目の前で担当の人がニコニコしているので、おいそれと「いいえ」にチェックも付けられません。
アンケートが終わると席に移動することになりました。自分たちの他には誰もいません。
お茶を持ってきてくれて、最初はしばらく楽しく雑談していました。
そして、「そろそろお仕事の話もしないといけませんね」と、おおまかに3つの話をされました。
ひとつは「ダイヤモンドの4C」の話。
ダイヤモンドの価値を決める基準には4つの「C」、
すなわちカラット(重さ)、クラリティ(透明度)、カラー(色)、カット(形)があります。
それぞれに評価基準があり、評価が高いダイヤモンドはものすごい高額になる一方、
評価が低すぎるダイヤモンドは商業価値が無いと見なされるものもあり、まさにピンキリ。
その中でもエンゲージリングに採用するダイヤモンドというのは、一定の基準が存在します。
もうひとつは結婚観の話。
男性が結婚したい女性に対して求めるものというのは、
「優しい」「可愛い」「料理が上手」などといろいろありますが、
同じように女性も男性に対して求めているものがあります。
それは愛情や金銭的安定感、ちょっとした気遣いができるなどといったコミュニケーション能力など、
いろいろありますが一番大切なのは「価値観」です。
女性は男性に対して、結婚に対して真摯に考えることを求めています。
でないと、結婚してから上手く行かないかもしれないからです。
最後は現実的に結婚するにはどうすればいいのかという話。
結婚に必要なのは相手と「お金」です。
結婚に必要なお金は、結婚式・披露宴、結納、婚約指輪、結婚旅行……等々を合算すると、
およそ850万円必要です。しかし今の世の中、この金額をいきなり出せる人はなかなかいません。
そこで私たちは、この負担を少しでも少なくするために、
結婚費用のうちいずれ絶対に必要になってくるであろうエンゲージリングを、
独身のうちからローンで買うことをオススメしています。
人の生活には、生きるのに絶対必要でない「死んだお金」が毎月相当の額あります。
これからは勿体ないお金の使い方は止めて、少しずつ結婚費用に投資するのはいかがでしょうか。
……そう、このお店は、自分にダイヤモンドを買わせようとしているわけです。
独身を捕まえて何を売ってくるのかと思っていましたが、つまりこういうことらしい。
エンゲージリングは結婚するならいつか絶対に必要になるものだから、買うタイミングは問わない。
だから独身のうちからローンを組んで買うことによって退路を断ち、
結婚に向けて行動するようにすればいい。
エンゲージリングにするダイヤモンドは婚約するまでは男性用アクセサリーとして流用すればいい。
そうすれば身なりを整えられて一石二鳥じゃないか。
そして肝心のダイヤはいったいいくらなのか。
「最長5年、月々15,000~20,000円くらいですね」
いやいやいやいや。90~120万円の買い物を今即決なんてできるわけないし、
そもそも毎月2万円のローンを「はいわかりました」と了承できるほど金持ちじゃないんですけど。
生活が厳しいのでなかなか難しいですねというニュアンスを伝えたら、
「え、なんで?」という表情。この辺から担当の女性が豹変していきました。
「月収15万円のフリーターの方も買っていかれる方いらっしゃいますよ」
「どんなに収入が増えても意識が変わらなければ残るお金は一緒ですよ」
「自分のためにしかお金を使わないなんて、虚しいとは思いませんか?」
ダイヤを買うのを渋っただけで、矢継ぎ早に攻撃される自分。あれ、何か悪いことしたっけ?
そもそもこの担当者の価値観では、家賃光熱費携帯代以外は全部「死んだ金」であり、
食費は削って当たり前、趣味に使えるお金は無いのが当たり前なのだそうです。
少なくとも結婚をすると自由に使えるお金は激減すると豪語します。
それは確かにある一面では正しいのかもしれません。
でも、だからといって今後結婚するかどうかもわからない可能性のために、
当面の趣味を衰退させる必要があるのか?
恋愛や結婚ってそこまで身を切らないといけないの?
自分の価値観では理解できなかったので、半ば困惑してしまいました。
自分の場合はこのまま生涯独身という可能性も大いにあるので、
そうなった場合にダイヤがまるで無駄になってしまうかもしれないじゃないか。
というニュアンスを伝えたら、
「ダイヤが無駄になることはありません!
男性用の装飾品としても使うことができるんですから」
「以前40代の男性の方がダイヤを買ったのですが、
最後は妹の結婚記念にあげたけれどそれで良かったとおっしゃってくれました」
と言っていたけど、それはなんか違和感があるような……。
妹にあげたり、自分の装飾品として使うということは結局当初の目的は達成できていないわけで、
当初の目的も達成できないかもしれないものに120万円(+利息?)を投資するのは、
自分の価値観では絶対にあり得ません。
しかし、どうも「買いません」とはキッパリ言いにくい雰囲気だし困ったなー、
などと渋っていると、担当者の攻撃がどんどん激化していきました。
「ここが分かれ道ですよ。ここで行動できなかったら一生そのままですよ」
「そんなに優柔不断だから、彼女もできないんじゃないですか」
「その年齢でこんなことも知らないなんて、恥知らずもいいところですよ」
女性って仕事のためとはいえここまで変われるものなんですよね。
甘い恋人のような応対をしていた先日までの彼女はいったいどこへ行ったのでしょうか……。
正直、怖かったです。
最終的に、自分が悩んでいると
「これ以上悩んでも何も変わりませんから、もう止めにしましょう」
とぶっちぎられ、追い出されるように店を後にしました。
というわけで、最終的にはダイヤを買わされずに済みましたが、恐ろしい目に遭いました。
結婚願望すらあるのかどうかも曖昧な現状で、
ホイホイ着いていってしまった自分の浅はかさにはほとほと呆れますが、
独身をターゲットにエンゲージリングをローンで売りつけるという商法が
実際にあるのだということもなかなかショックでした。
東京は怖い、というより、それ以上に自分の無知なのに行動力のあるバカさ加減が恐ろしいです。
「エンゲージリング 勧誘」でググるとまったく同じ事例を紹介しているブログが出てくるので、
少なくとも数年前からある手口みたいです。
都内在住で独身のみなさん、くれぐれも気を付けましょう。
まぁ、知らない人にはついていかないという原則をしっかり教えられている人は大丈夫と思いますが。
自分はそれを忘れかけていたことは否めないので、今回を機にしっかり胸に刻みたいと思います。