#6000

或る休日の午後


創作

窓から見えるペデストリアンデッキを歩く人波が途切れることはなく、
その下をバスや車が潜っていく。
街を照らす日差しは暖かく、季節がそろそろ変わることを予告していた。

歳のわりに小柄で、地味色のパーカーを羽織っている少女は、
窓の前に整然と並んでいるカフェの一席に深く腰掛けていた。
椅子が高すぎるのか、足は床に届かずに放り投げられている。
窓に並行してずらりと並んだ席はすべて埋まっていて、
少女よりは大人なのであろう人たちが、各々読書をしたり、小さなパソコンで何らかの作業をしたり、
あるいはずっと携帯をいじったりしては、みな一様に正面の窓に向かっていた。
幼さが残りながらも今日はどこか物憂い顔をした少女は、目の前の風景には興味がないらしかった。
少し猫背気味に前傾姿勢になり、注文したカフェラテを飲む。
背後からは、注文を受ける店員の声や、複雑なリズムを刻むジャズが聞こえてくる。
ときおり、どこかの自動改札機が「ピンポーン」というエラー音を響かせていた。
ここはどうやら改札からかなり近いらしい。

「平和だ……」
少女は誰に言うでもなく心の中でひとりごちた。
どこかにある巨大な時計が鐘を鳴らした。

少女には、ここが本当に現実なのか、それともあちらの世界が本当の現実なのか分からなかった。
ただ確かなのは、こちらの世界はこれだけ圧倒的なリアリティがありながらも、
どこどこまでも退屈であるということだった。
自分が成し遂げたいことは、もしかしたらあちらの世界で成し遂げるべきなのではなかろうか。
あちらの世界は夢なのかもしれないし、そうでないかもしれない。
でもちょっと現実的じゃない。現実というのはもっともっと、退屈であるべきなのだ。
そう、今日みたいな日のように。
そして、人はたいてい夢のような舞台でこそ、本当の自分らしさを発揮するものなのだ。
それは少なくとも、ここじゃない。

少女はもう一口カフェオレを口に含むと、物憂い表情をしながら目の前の風景にまた目をやった。

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