創作一覧

NO IMAGE
#5000

Instrumental V

視界の片隅で水泡が線を描きながら上がっていった。 誰かのあくびだったのかもしれない。 そこは、見渡す限り灰色の水で満たされる世界だった。 私は尾ひれを半ば無意識にはためかせながら、灰色の世界を少しずつ進んでいく。 しかし、進んでいるという感じはまるでしない。 時折、海底は曲がりくねって山を形成し、 びっしりと並ぶ珊瑚礁の村は灰色の世界をわずかに彩っていた。 よく目を凝らしてみると、そこには豆粒ほどの魚やカニ、あるいは海底を...

NO IMAGE
#4600

或る休日

小柄な女子が小さなアパートの片隅の部屋で寝息を立てていた。 窓から入ってくる日差しを避けるように、布団を頭の上まで引っ張ってうずくまっている。 ふと、布団の中から手だけが出てきた。それは周辺の布団を撫でるように徘徊していると、 やがて枕の下に潜り込んでいた携帯を見つけ、それを掴むと布団の中へ引っ込んでいった。 日差しの入ってくる窓の向こうからは、どこからか布団を叩く音が聞こえる。 もう少し近いところでは、ベランダを掃除している...

NO IMAGE
#4000

Instrumental IV

どこまでも透き通った海と白い砂浜の上に、楕円形の島がぽつんとあった。 それは視界の隅から隅まででちょうど収まるほどの大きさで、 中央に傘のような巨大な木が一本立っているだけの、小さくて色気のない島だった。 ふと、視界の隅から何かがふわふわとよろめくように現れた。 鳥かと思ってそちらを顧みると、それは空に浮かぶ植物だった。 それらは丸く白い大きな風船のような球に葉を付け、 風に任せて漂いながら、やがて島の大きな木の上に不時着し...

NO IMAGE
#3001

空想の冒険家 -後編-

私は、相変わらず暗い大通りを延々と歩く内に、なんだかひと気のありそうなあの光が、 単にこの大通りの直線上にあるわけではないという事を知った。 どういうわけか、光は私が進むほどに左右にずれていき、 私は分岐点が来るたびに方向を変えざるをえなかった。 そんな調子で一時間も歩いていると流石に疲れてきた。 どうにかして座って休憩したいと思い、脇に立ち並ぶ店を眺めながら歩いていると、 以前両親に連れられて入ったことのある家電量販店を見つけ...

NO IMAGE
#3000

空想の冒険家 -前編-

周波数の高いノイズに混ざって、どこからかピアノの音がポロポロと聞こえてきた。 四階にあるこの教室は、放課後の夕暮れ時になってくると 同じ階にある音楽室からいろいろな音が聞こえてくる。 私は、なんだか懐かしいような、遠くの世界にあるようなその音に耳を傾けながら、 黙々と学級日誌を書き綴っていた。 前の席には、私の良く知っている女の子が、いつものように本を読んでいる。 関心のあることや興味のあること、好きなものについて考えるとき...

NO IMAGE
#2100

初雪の詩

いつもと同じ時間に起きたのに 少しだけ余った朝の時間 そろそろ外に出ようかと そういや昨日は雨が降ってたなと カーテンを勢いよく開けた 初雪の光が僕に飛び込んできた ある日 薄皮の光に包まれた少年がいた 深い吐息は形になって空へ飛んでった ある朝の その無重力の空間に 少年は 満足気な顔と足跡と またひとつ吐息をそこに置いてった ある日 薄皮の光に包まれた少年がいた きっと明日にはとけ...

NO IMAGE
#1900

金魚鉢の詩

広がったしずくのような空の まんなかにいた私の 晴れわたる青い 言葉のない世界の どこかからともなく 淡い光の ひびきわたる 消えてはふえていく ふえてはつながって つながっては 消えて 私が想う限りの 色をつけていく 私が知る限りの 晴れわたる青い空の 光があつまった はるかかなたにいる 天使のような あなたに 真っ白なあなたへと 会うために泳ぐ このつかめないしずくの空を ...

NO IMAGE
#1700

風邪と共に書く詩

実は結構 日々は充実していたりして 今日も暖かい布団にもぐって でもどうしてだろう いつも 寒くて寒くて たまらなくて 指先が暖かくなっても背中が寒い 背中を暖めても指先が冷たい いつしか動けなくなった時 どこへ行くのかを考えながら 白々とした朝に照らされて 凍える 風がたなびいて 震える 目の前に沢山ある光を 僕は掴めない 倒れこむと 真っ暗闇の 本...

NO IMAGE
#1500

鯉幟の詩

例えば 明日待ち受ける辛いことや悲しいこと 痛いことや嫌いなことを 挫けたり 逃げ出したり 目をつぶって嫌々と 耐え抜いたりする 例えば 今まで生きて来た意味を失った 自分の価値を否定された 足蹴にされた そんな事があって もう生きる意味がないと思ったりする そんなとき思うんだ 何で人は生まれながらにして こんなに大きな荷物を抱えているのか って そんな時思うんだ 人が...

NO IMAGE
#1377

さびしい詩

あのね、今日もね、いつもと同じ一日だったよ 帰りにね、雪が降ったんだけど、なんだかね、積りそうにないの 今日は目覚めがよくって、多分朝が一番楽しかったかな 明日も寒いみたいだね、それじゃあ、おやすみ・・・ ・・・いつも話聞いてくれてありがとう つまらない話でごめんね 何か面白いことが起きればいいんだけど 何だかありそうにないんだよね 冬は寒くていやだね みかんがおいしいから、私はそん...